認知症と動脈硬化のニュースと解説
脳視神経細胞を操るミオカインとオレキシン
脳神経変性疾患抑制と改善に期待
2023/09/23
 

1. ミオカイン(マイオカイン:myokine):脳視神経細胞、免疫細胞など体組織の修復
    脳神経変性疾患抑制と改善に期待
 *アディポネクチン:酸化脂肪酸による動脈硬化抑制ミオカイン
   *脳由来神経栄養因子(BDNF:Brain derived neurotrophic factor):
      神経細胞成長再生ミオカイン
2. オレキシン(orexin:ハイポクレチン):
    脳視神経細胞が分泌する神経伝達タンパク質(ホルモン)
 *オーファン受容体(orphan receptor):結合相手が不明の受容体


 
1. ミオカイン(マイオカイン):脳視神経細胞、免疫細胞など体組織の修復
ミオカイン(マイオカイン:myokine)とは300種類以上があるのではといわれる
神経伝達物資ホルモン(サイトカイン:cytokine)グループの総称。
運動により血中への分泌が促進されるといわれます。
ミオカイン受容体は脳細胞、脳視神経細胞、免疫細胞、筋肉、脂肪、肝臓、膵臓、骨、
心臓など広い範囲で発見されています。
ミオカインが免疫や、骨を含む体組織の修復、維持など多方面に
関与するタンパク質といわれる所以(ゆえん)で、急増する脳神経変性疾患の
改善にさらなる研究が期待されています。

これまで見いだされた主要ミオカインにはインターロイキン6(Interleukin-6)、
ミオネクチン(CTRP15)、イリシン,SPARC(secreted protein acidic and rich in cysteine),
デコリン,アディポネクチン、
脳由来神経栄養因子(BDNF:Brain derived neurotrophic factor:)などがあります。
 
ミオカインはコペンハーゲン大学の*ペダーソン博士( Dr.Pedersen*)らによって
存在が示唆されていましたが、2008年になり、その正体が確認されました。
生命活動に機能している物質には必ずといってよいほど反作用を持つ物質が存在して
バランスを保っていますが、ミオカインも、同定とほぼ同じくして、反作用を持つ
ミオスタチン(myostatin)の存在が確認されています。
*Dr. Bente Klarlund Pedersen:
professor of integrative medicine at the University of Copenhagen

*アディポネクチン:酸化脂肪酸による動脈硬化抑制ミオカイン
東京大学の山内敏正医師、門脇 孝助教授らがDNAのクローニングに成功しています。
アディポネクチン(adiponectin)は,244 アミノ酸残基から成るタンパク質。
脂肪細胞で産生分泌されるインスリン感受性ブドウ糖濃度低下ホルモンでもあります。
マウスレベルではアディポネクチンの欠乏で糖尿病になることが確認されています。
冠動脈疾患、肥満、Ⅱ型糖尿病患者のアディポネクチン濃度は血漿中で減少しています(Nature. Jun. 12. 2003、Yamauchi.T et al)
アディポネクチンは酸化脂肪酸の発生などでおきる血管障害時に、障害場所に集積して
動脈硬化抑制に働くという、いわば血管修復材の役割も持ちます。
 
*脳由来神経栄養因子(BDNF:Brain derived neurotrophic factor)
神経細胞の成長や再生を促すミオカインたんぱく質

2. オレキシン(ハイポクレチン):脳視神経細胞が分泌する神経伝達タンパク質
オレキシン(orexin)はハイポクレチンとも呼ばれ、摂食コントロールや
睡眠調節に関わる神経伝達ペプチド(neuropeptides)
オレキシンニューロン(オレキシン脳神経細胞)から分泌されます。
不眠(ナルコレプシー)患者は脳脊髄液中でオレキシンの量が
低下していることが知られています。
東京大学の酒井寛さんによれば脳神経細胞が分泌するオレキシンは
「食べる」という行動に対して「楽しみだなあ〜幸せだ〜!!」と思いながら、
よく味わって食事をすると分泌が盛んになるということです。


オレキシンは1998年に筑波大学の桜井 武氏、テキサス大学の柳沢正史氏らにより、
未知であった*オーファンG蛋白質共役受容体(G protein-coupled receptors)に対する
受容体結合物質(リガンド、ligand)として、視床下部に局在する生理活性物質2種が
発見され、33アミノ酸残基(分子量3,562)のものが、オレキシン-A、
28残基(分子量2,937)のものが、オレキシン-Bと命名されました。
現在では不眠治療のために、医院において脳脊髄液中の
オレキシンの量を計量することが出来るようになりました。

*オーファン受容体(orphan receptor):結合相手が不明の受容体
オーファン受容体とは受容体結合物質(リガンド)が同定されてない孤児(オーファン)の受容体のこと。
細胞膜において受容体結合物質(リガンド)(配位子)が同定されていない
受容体(オーファン・レセプター)の数は数百以上あるといわれています。
G蛋白質共役受容体(G protein-coupled receptors)はすでに多数が発見されていますが、
相手となる結合物質を同定するのは容易ではありません。
オーファン受容体への結合物質を同定することによって初めて受容体の機能が解明され、
医薬品の開発などの応用が出来るようになります。

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