ケン幸田の世事・雑学閑談(千思万考)
第百三十九話:「暖房器の代表だった炬燵と火鉢」 
2022/12/30
今の温暖化と言っても、高々百年前との比較の話で、縄文時代の遺跡は、
関東以北にしか見出せず、その大半が北海道、青森に集中していることから、
一万年も以前はもっと温暖だったこと、千年前の平安時代も、今よりもずっと
暖かかったと解明されています。
尤も、江戸時代や明治までの冬は、今よりも、はるかに寒冷だったようで、
しかも、大正の石炭・ガスストーブや昭和の電気炬燵や、最新のエアコンなどは皆無の時代で、
炭が主要燃料だった時代の暖房器具の代表は、炬燵と火鉢でした。
隙間風が吹きこむ寒い長屋に住む庶民たちには、格別の暖が恋しい季節、
高価な炭を毎日焚くわけにもゆかず、かまどの薪の残り炭などを活用したのが、
我が国独特の暖房装置・炬燵と、湯沸かしや焙り小料理に使用した火鉢が、
暖房と言うよりは防寒の役を担っていたと言う方が正しい表現でしょう。 

腰ぬけの妻のうつくしき炬燵かな     与謝蕪村
思ふ人の側へ割り込む炬燵かな      小林一茶
 
「炬燵」は火燵とも表記され、「敷火燵」は、床に炉を切りその上に床の高さと同じ格子を乗せ、
これに布団を掛け四方から足を入れて暖を取るもの、「置炬燵」は、格子に組んだ櫓を置き、
その中に炉を入れ、移動できるようにしたもの、「掘火燵」は、床を切って炉を設け、
腰かけて脚を入れることができるようにしたものを、言います。

住みつかぬ旅のこころや置火燵      松尾芭蕉
行く客の跡をうづむや置炬燵       西山宗因
つくづくともののはじまる火燵かな    上島鬼貫
火燵出て古郷こひし星月夜        池西言水
寝ごころや火燵布団のさめぬ内      宝井其角
 
古き良き時代、家庭団らんの真ん中にあった「火鉢」は、灰を入れ、中に炭火などをいけて、
湯茶などを沸かせたり、手を温めたりする具で、木製、金属製、陶磁器製などがありますが、
昔は専ら火桶、炭火箱など木製が多かったようです。
「行火」は、その小型移動版で、炭火を入れて手足を温める道具で、「猫火鉢」は、
側面に数個の孔をあけた土製の囲いの中に、小火鉢を入れて寝床で用いたものを言います。

うき時は灰かきちらす火鉢かな      松岡青蘿
ぼんのくぼ夕日にむけて火鉢かな     小林一茶
かの巫女の手焙の手を恋ひわたる     山口誓子
三毛猫とわかちあいけり猫火鉢      櫂未知子
 
明治の文豪・夏目漱石が、冬の一日を綴った短編「火鉢」に「体が震え、暖を取りたくて
書斎の火鉢に手をかざすが、背や肩がむやみに冷える、、、」と書き残しています。
                  
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