世界の健康と食の安全ニュース
長寿社会の勝ち組となるには(その47):
「癌の発症と食の因果関係は薄い」と言い切れるか
疑問が生じた、大手新聞コラムの医学よもやま話。
2022/09/25




(まえがき)新聞コラムの同封を止めました。

1. 専門家ならだれでも知っている食材含有農薬の危険性
2. 農薬取締法と食品安全基本法の制定
3. 農薬取締法の安全使用量基準は先進諸国と大きく異なります
4. 無農薬や減農薬が難しい日本の農業事情
5. 消費者が協力せねば、日本はいつまでも農薬大国
6. 外食産業、加工食品に消費される野菜総量の6-7割は輸入
 
 
新聞コラムの同封を止めました。
最近数か月、がんに関する情報の必要性が高そうなお客様に新聞のコラムを
転写して同封していましたが、このほど中止いたしました。
新聞、テレビ、出版などのマスコミ露出度が高い学者が一流とは
限らないのは誰もが知ることでしょう。
一般的に学者や臨床医がマスコミ露出を避けているのは、疾病の発症が
個々人で千差万別であり、未開だらけの医学分野で不特定相手には
軽はずみな発言が出来ないことを周知しているからです。
 
これまでは、お送りした新聞コラムの筆者が当初書いていたテーマに
筆者自身の専門外が多いとは言え、エッセイ的な書き方ですから
読みやすいのではと注目していました。
ところが当初から専門外の癌(がん)の病理や薬学、公衆衛生学に
断定的な自身の意見を書いた記事が多いために、ご紹介を避けていました。
そのうちに方針転換。癌治療、病理研究分野の専門家の多くが
納得する学説のみを取り上げるようになりましたので、ノギもお客様に
紹介していましたが、最近、再び自己主張の強い内容を掲載するように
なりましたので止めることといたしました。
 
1. 専門家ならだれでも知っている農薬の危険性。
コラムの筆者が最近掲載した内容に
癌(がん)発症と食生活の関係は薄い、
農薬や添加物は法律で食の安全性が保たれており、行政指導が行き届いている
「したがって有機食品も意味がない」ということが記されていました。
ずいぶん思い切って書かれた内容ですが、疑問に感じない読者がいるのでしょうか?
(ただし、ノギが信頼しているカリフォルニア大学LAの日本人医学者も筆者同様に
日本の食の安全性に関する農薬取締法と食品安全基本法を賞賛していました)

この方は医薬品企業、政府、行政とは大きく距離をとり、健康に関する
ひも付きでない、正しい情報発信と選別、公衆衛生学、疫学の重要さを堂々と
発言されている方です。
主要成分を化学合成やバイオ合成して摂取する風潮に異を唱え、
食材そのものを食するべきと主張。
当然ながらがんと食生活の密接な関係を否定しません。
(日本の農薬取締法の許可使用量が諸外国に較べ
とびぬけて多いことには気づいていないようですが)
 
2. 農薬取締法と食品安全基本法の制定
日本では1948年(昭和23年)に農薬取締法が制定されましたが、
消費者を護るというより、不良農薬を取り締まることが
基本だったようです。
戦争直後の極端な食糧困窮時に国民の食の安全を護ることには
前年の1947年に*食品衛生法が制定されています。
生産者寄りだった農薬取締法は制定以来2002年まで3度改訂されており
最後の改訂後2003年7月1日に食品安全基本法が施行され、
消費者保護を前面に打ち出しました。
 
それと同時に内閣府に食品安全委員会を設置。
科学的知見に基づき、関係行政機関から独立し、客観的かつ中立公正に
リスク評価が出来るようになりました。
太平洋戦争戦中、戦後の食糧不足から約60年。
戦後の食糧増産のために農産物生産者に向いていた行政方針の
大転換であり、自給率改善の目的もありました。
農薬取締法には様々な所轄移転など行政の工夫も加わり、
万全の備えでした。
新法の当初は消費者寄りの素晴らしい制度と考える人が
多かったのですが、見落としていけない大きな落とし穴がありました。
それは許可されている農薬の安全使用量基準。 
 
3. 農薬取締法の安全使用量基準は先進諸国と大きく異なります
コラムの著者が見落としている?のは、この法が定めた
使用規制基準量です。
ある教授の調べでは、FAO(国連食糧農業機関)基準に基づく、
農薬使用総量がアメリカは日本の5分の1。イギリスは日本の4分の1。
ドイツ3分の1。フランス3分の1。スペイン3分の1。オランダ5分の4。
デンマーク10分の1。スウェーデン20分の1です。
また人口大国ブラジルが日本の3分の1。インドは30分の1です。
耕作面積当たり修正後も、推定量となりますが日本が大国であることには
変わりありません。
中国、韓国が日本と肩を並べる大量使用の御三家ですが、
中国の統計はいずれも政策的官製統計。
日本と肩を並べる数字に合わせた可能性もありますから各国ともに
データを除外していますが御三家からは外していません。
いずれにせよ農業の生産者が法を順守しても、大量の農薬が
消費者に注がれています。
 
4. 無農薬や減農薬が難しい日本の農業事情
家庭菜園や園芸をされる方なら周知していると思いますが、
日本の自然環境で農薬を使用せずに、立派な花を咲かせ、
効率よく見栄えする姿の美味しい作物を作ることは至難です。
日本はアメリカのように遺伝子組み換え農産物で害虫を排除する
解決はできません。
 
薬減らしには、生産者が生産法の工夫や集約をすることが重要ですが、
疎放農業で安い野菜を供給している農業従事者が高齢化し、
節税のために農業は形だけという農家も少なくありません。
伝来の農法を改善することや、集約化には抵抗があり、
また大都市近郊は土地価格が高いですから、農業は放棄しても
土地は放棄しません。
 
集約農業が求められる現場では本格的な集約より、ハウス栽培や、
化成肥料による水耕栽培くらいまでの施設利用型が主。
規模の拡大によって食の安全性を改善する未来型は、いまだに未達です。
 
5. 消費者が協力せねば、農薬大国が続きます
消費者が安全性や低価格を優先するならば、農薬の危険戦を理解し、
減農薬を受け入れて、生産物の不揃いや味覚の低下に妥協が必要ですが、
障害は、それを求める消費者が少ないことです。
結果として、稲作、野菜を中心に世界の農薬大国の不名誉な称号が続いています。

多くの国民が農薬の健康障害に無関心なのはTVのグルメ番組からも
容易に推測できます。
調理人や取材のTVゲストが、農家を訪問し農薬使用量の多い
イチゴやリンゴ、ブドウ、葉、茎野菜などを生産現場で洗わずに直接味見。
プロを気取っているのでしょうが、子供には見せたくない荒業。
お茶やお米も農薬使用量の多い産物。
中国には茶葉の一番出しを捨てる慣習がありますが、日本にはありません。
お米に不純物が混入しなくなってからは、「磨ぐ」習慣が無い人も多いようです。
減農薬は消費者のマインドが変わらなければ達成できません。
 
6. 外食産業、加工食品に消費される野菜総量の6-7割は輸入
もう一つ、コラムの筆者が見落としているのは野菜類の半数以上が
中国、韓国など農薬大国からの輸入。
大手商社が介入することが多い膨大な量ですから、検査はサンプル抽出。
販売先のほとんどは外食施設と加工食品用ですが、
シイタケ、ニンニク、タケノコなど外国製の価格が
最大10分のⅠも安い野菜は一般消費者の購入も多いといわれます。
国産を偽装した輸入農産物も少なくないようです。
 
したがって今後、日本の農薬使用量が改善されても、農薬の毒性により
国民が受ける被害は、大幅には減りません。
検査が行き届いている日本の食は安全性が高く、癌の発症と食の
因果関係は極めて薄い」と言い切れる状態ではありません。
 
人口うま味調味料、人工甘味料、人工色素、人工保存剤など
食品添加物やダイオキシン、ヒ素、水銀などの含有食材は
毒性の作用機序、作用量が不明なために(やむを得ず)認可されている
といわれます。
高温加熱で毒性を持つタンパク質のアクリルアミドも
加わりますから、外食の安全性を脅かす食品は減らないでしょう。
 
医学者や医療関係者が、日本は法治国家の優等生だから
「食と癌発症との関係は薄い」と言い切れる実体ではありません。
発がんばかりでなく、脳視神経、腎臓肝臓へのダメージ、
脱毛、薄毛、ED、アトピー、免疫異常などとの因果関係も疑われていますが
否定できないのが実情です。

文責 しらす・さぶろう
 
(次号予告)
疫学でしかわからない「癌と食生活の因果関係」
医薬品や食材の疾病治癒に対する詳細な分子レベルでの作用機序は
解明に時間がかかり、医薬品製造会社が監督官庁の必要とする情報習得には
長い時間がかかります。
しかしながら実際に「治癒」「予防」が納得できる疫学は人類に最も
役立つ公衆衛生学の心髄です。
「医学、薬学の細かな解説は不要。必要なのは現実に治癒、予防できること」
公衆衛生学の世界的権威であるハーバード大学公衆衛生学部、MITの研究が土台となった
ノギボタニカルのブドウ・レスベラトロールの
有用性には多くの医学、薬学、疫学論文がありますが、
人体構成の本元である細胞内小器官ミトコンドリアの代謝活動を
活性化する作用は老化制御ばかりでなく、多くの疾病予防、治療に働くことが
医学、薬学、疫学的研究で証明されています。

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