トランス脂肪酸のニュースと解説
日本人の健康寿命を縮めるアメリカン・ブレックファースト:
トランス型脂肪酸過多の欧米式朝食
2015/04/03
アメリカ流が深く浸透している若者、中年層の食事。
米離れ、魚離れが顕著なうえにマーガリン、食用油はトランス脂肪酸が豊富。
こんな習慣は一日も早く改善すべきでしょう。
アメリカの朝食は三食のなかでもでも、最もカロリー過剰、トランス脂肪酸過剰が
指摘されています。
フランスなどのパンとコーヒー中心のコンチネンタル・ブレックファーストに較べ
脂質が多い副食が特徴的。
1日で最も脂質の多い食事と言われます。。
コンチネンタル・ブラックファーストも近年は副食が多くなりましたが、それでも
アメリカ流に較べればカロリー過剰、トランス脂肪酸過剰と言えるほどのものでは
ありません。
この10年でアメリカの加工食品からはトランス脂肪酸が大幅に減少しましたが
アメリカ流を踏襲した日本の加工食品、外食の現状は、この記事に掲載されている
10年前のアメリカのデータと大差ありません。



トランス脂肪酸研究会                               
乃木生薬研究所は、2000年より
トランス脂肪酸の排除に 取り組んでいます。



1.トランス型脂肪酸が表示された米国の食品摂取基準(Dietary Guidelines for Americans)
2.毎日の食生活と脂質の摂食許容量朝食における総脂肪分の摂食量
3.飽和脂肪酸の摂食量
4.米国人のトランス型脂肪酸標準摂取量
5.主要朝食材料の総脂肪分、トランス型脂肪酸(トランス脂肪)、コレステロール含有量.
6.コレステロールとビタミンC
7.米国の2005年食品摂取基準で発表された主要項目



1. トランス型脂肪酸が表示された米国の食品摂取基準
(Dietary Guidelines for Americans)

米国厚生省*と農林省*が共同発表する食品摂取基準は5年ごとに発表されています。
国民の健康を願うこの論文は世界のお手本となっており、
日本でも厚生労働省が日本人の栄養所要量食事摂取基準を5年ごとに発表しています。
*厚生省(Department of Health and Human Services :HHS)
*農林省(Department of Agriculture :USDA)

米国の2005年に発表した食品摂取基準は約10項目に大別されますが、脂肪(Fats)の項目が
これまでとは異質でした。
特筆すべきなのはトランス酸の害を明確に表示したことです。
2010年の改定でも飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、塩分を避けるべき三大食品成分
として取り上げており、2005年の慢性心臓病のために避けるという表現から
悪玉コレステロールを増加させる(LDL cholesterol-raising effect)という表現を加えています。

2005年に変化した食品摂取基準の主要ポイント
*心臓血管疾患の大きな原因となるトランス型脂肪酸の許容量は未定ですが、
摂食を出来うる限り抑える必要があることを明確にした。
*総脂肪分は総カロリーの20-35%に抑える。
*脂肪酸はできるだけ植物や魚の単価、多価不飽和脂肪酸から摂食するようにする。
*牛肉などの飽和脂肪酸は総カロリーの10%以内にする。
*コレステロール総量は一日300mg以下に制限する。

2. 毎日の食生活と脂質の摂食許容量
米国の食品摂取基準を参考にすれば、一日のカロリー摂取を、2000カロリーにしている人の
総脂肪分摂食許容量は44g-77g (400-700カロリー)*。
このうち飽和脂肪酸(主として動物性脂質)は22.2g(200カロリー)以下が摂食許容量。
米国の食品には総脂肪分、飽和脂肪酸、コレステロールなど脂質の表示義務があり、
ラベルに容量が表示されていますからそれに基づいて計算できます。
トランス脂肪の許容量は研究中であり、未定です。
最低でも半世紀くらいの期間が必要でしょう。
*脂肪のカロリー(1グラム = 9カロリーで計算)

3. 朝食における総脂肪分の摂食量
欧米式の朝食(アメリカン・ブレックファースト)はパンや、ミルクを使用したシリアル類、
オートミール、卵、じゃがいも料理、ベーコン、ソーセージなど肉料理が中心となります。
これにデザートのケーキ類やサラダのドレッシングを加えれば、
一日で最も脂質の多い食事かもしれません。
ただし、コレステロールはバター、ミルクを中心に1日許容量の10-25%程度ですから、
問題となるほどの量ではありません。
アメリカン・ブレックファーストの中からバターを
ティースプーン一杯(10.8g)、ミルクをカップ1杯(6.6g)、フレンチフライの中サイズ(26.9g)の
脂質を計算すると、総脂肪重量は44.3グラムになります。
これで398カロリーを超えますから、すでに許容量(400-700カロリー)の最低量近くになります。
これにケーキなどを食べて、ショートニングがティースプーン一杯(13g)加わるならば、
総脂肪重量は57.3gを超えて、515カロリー以上になります。
パンの場合は種類や作り手で脂肪分が大きくばらつくためにデータが不足しておりますが、
クロワッサンで飽和脂肪酸が6.6gというデータがありますから、
パン、卵、ベーコン・ソーセージなどをこれに加えれば総脂肪重量が大幅に増えていきます。
朝食だけで、一日許容量は簡単にオーバーするわけです。
バターをマーガリンに代えても、総脂肪重量が1割くらい減ずる程度。
トランス脂肪酸の有害性を考えればマーガリンは不可でしょう。

4. 飽和脂肪酸の摂食量
前項の欧米式朝食でバターをティースプーン一杯(7g)、ミルクをカップ1杯(4.3g)、
フレンチフライの中サイズ(6.7g)の食事をすると、飽和脂肪重量は18グラムになります。
これをカロリー計算すると162カロリーになり、飽和脂肪許容量(200カロリー)に近づきます。
これにケーキなどを食べて、ショートニングがティースプーン一杯(3.4g:米国サイズでケーキ一切れ)
加わるならば、21.4g、192カロリー以上になります。
ホテルの朝食バイキングなどで、多めに食べた場合の朝食は、
それだけで飽和脂肪酸の一日許容量がオーバーします。

5. 米国人のトランス型脂肪酸標準摂取量
アメリカン・ブレックファーストに多いトランス型脂肪酸含有食品の脂肪酸含有割合は以下の順。
青棒が長い食材は危険です。

 

第3項の朝食例ではトランス型脂肪酸の含有量は、バター(0.3g)、ミルク(0.2g)、フレンチフライ(7.8g)
合計が8.3gですが、バターの代わりに固形マーガリン(2.8g)を使用すると10.8gになります。
デザートなどで植物性油脂使用のケーキ一切れが(4.2g)が加われば15g。

この例ではトランス型脂肪酸が飽和脂肪酸総量に近い数字であり、総脂肪量の25%を超えます。
高脂血症、中性脂肪過多、高血圧などの持病がある方には決して望ましい数字とはいえないでしょう。
米国のトランス脂肪の研究から推測すれば、日本人で上記の持病のある方、高齢な方は、
朝食に和食を選択することや、マーガリン、ケーキ、ディープフライ類は避けることが賢明なようです。

トランス脂肪酸含有率の高い食品の摂食率(平均的なアメリカンブラックファースト).
a. ケーキ、クッキー、クラッカー、パン、パイなど40%
b. ベーコン、ハムなど動物性食品類21%
c. マーガリン17%
d. フライドポテト8%
e. ポテトチプス、コーンチップ、ポップコーン5%
f. ショートニング4%
g. サラダドレッシング3%

6. 主要朝食材料の総脂肪分、トランス型脂肪酸(トランス脂肪)、コレステロール含有量
(第五項の図を参照)

a. バター、ティースプーン一杯(総脂肪10.8g)、(トランス脂肪0.3g)(コレステロール31.1mg)、
b. ショートニング、ティースプーン一杯(総脂肪13g)、(トランス脂肪4.2g)(コレステロール0mg)
c. フレンチフライポテト、(147g)中サイズ(総脂肪26.9g)(トランス脂肪7.8g)(コレステロール0mg)
d. 固形マーガリン(総脂肪11g)、(トランス脂肪2.8g)(コレステロール約0mg)
e. チューブマーガリン(総脂肪6.7g)、(トランス脂肪0.6g)(コレステロール約0mg)
f. ミルクカップ1パイ(総脂肪6.6g)、(トランス脂肪0.2g)(コレステロール34.9mg)
g. ドーナッツ一個(総脂肪18.2g)、(トランス脂肪5.0g)(コレステロール23mg)
h. クロワッサン一個(総脂肪6.6g)(トランス脂肪2.8g)
(注)第3項から第6項までの脂質量は調査当時のものです。

2006年頃より米国食品業界ではトランス型脂肪酸の減少に取り組み、この10年で
このデータより大幅に改良された食品が増えてきました。。

7. コレステロールとビタミンC
コレステロールは誤解されやすい成分。
コレステロールは、コントロール機能が正常に働かないと、アテロームが増加して
心臓血管病の原因となることが知られていますが、アテロームは飽和脂肪酸や中性脂肪が、
より大きな原因となるとも言われています。
コレステロールを飽和脂肪酸や中性脂肪と混同されて理解している人が多いのが実態。
コレステロールは体内(肝臓と小腸)で一日1000mgは合成される遊離脂肪酸で、
細胞膜、胆汁酸、ステロイドホルモン類、ビタミンDの原料として重要な役割を果たす成分。
体内合成量は食品摂取による量の5倍以上とも言われます。

コレステロールは肝臓からコレステロールを必要とする細胞に搬送するために、
血中ではたんぱく質と結合しています。
この物質は脂質(英語ではリピド:lipid)とたんぱく質(英語ではプロテイン:protein)が結合しているため、
日洋混合の言葉であるリポ蛋白(リポプロテイン)と呼ばれますが、
これが一般に理解されているコレステロールです。
医薬品ではコレステロール合成酵素を意図的に阻害するものがありますが、
コレステロールは体に重要な成分ですから、細胞膜機能低下など副作用もあります。

理想的なのはコレステロールを細胞膜や胆汁に変換させる努力をして、
余剰分は胆汁や水溶性食物繊維とともに排出させることです。
これがコレステロールの正常な機能。
余剰コレステロールは排出が不十分になると、胆嚢や胆管結石の原因ともなります。
胆汁への変換にはビタミンCが補酵素の役割をしますから、十分な天然ビタミンCの
摂取が重要な対策となります。
ビタミンCは天然ならば有害性も小さくコレステロール合成時に産生される
活性酸素を除去する強力な抗活性酸素阻害剤でもあります。
化学合成されたビタミンC(アスコルビン酸)は肝臓障害など、新たな有害性がいろいろ議論され、
機能についても効能を疑う学者が増えています。
天然のビタミンC豊富なジャガイモ、かんきつ類、いちごなどを選択すべきでしょう。
天然ならば少量で充分です。

7.米国の2005年食品摂取基準で発表された主要項目
  • a. 食品摂取基準の背景と目的(Background and Purpose of the Dietary Guidelines for Americans)
  • b. 必要カロリー摂取のための摂取栄養分(Adequate Nutrients within calorie needs)
  • c. 体重コントロール(Weight management)
  • d. トレーニング運動(Physical activity)
  • e. お奨め食品Food groups to encourage
  • f. 脂肪(Fats)
  • g. 炭水化物Carbohydrates)
  • h. 塩とカリウム(Sodium and Potassium)
  • i. アルコール飲料(Alcoholic beverages)
初版:2005年2月
改訂:2013年8月
復刻:2015年4月

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