ケン幸田の世事・雑学閑談(千思万考)
第二話:中韓トピック:中韓経済の行き詰まり
2013/07/12
このところ中国の危機が深刻化してきたようで、その証左に、相手によって強腰外交と揉み手、
ゴマ摺り外交を使い分ける“カメレオン外交”が見え見えですし、
経済成長率鈍化の歯止めが効かず、点火寸前の債務危機、中央・地方政治の腐敗蔓延と国営事業との癒着、
さらにその結果としての極端な富の偏在(5%のリッチが国民所得の9割を占める)、
水と空気汚染に始まる数多の環境問題と感染症恐怖、
そうした影響を受けての庶民の大型デモ頻発(年間25万件突破)、
抗議・反体制集会の多発(年間百万件突破)など、次々と問題点を露呈しつつあります。

共産党独裁では、独立した統制・復元機関はないため、自浄作用が全く期待できませんので、このまま推移しますと、
ソ連崩壊の辿った道へと迷走する可能性が高まってきたとも言えそうです。
そして、偏狭ナショナリズムの押し付けにこりごりの近隣アセアン諸国やアフリカ各国からは、冷ややかな目が注がれ、
併せて明らかな警戒のノロシが上がり始めているようです。
なぜか日本のマスコミ報道では余り目にしませんが、欧米やアジア主要国では「中国の孤立化が始まった」
との記事をよく見かけるようになっております。
果たして、当の中国首脳は「中国有っての世界」という妄想に取りつかれたままなのか、それとも、いち早く「世界あっての中国」を
自覚して身を正すのかが問われているのです。

中国経済のハードランディングが現実化しているのは、金融セクターや地方政府、国有企業が抱える天文学的な額に上る
不良債権を最大要因としており、国内の信用秩序がすでに崩壊したとも言われています。
20世紀末、中国経済が世界経済の牽引車だと言われて以来14年間で初めて、人民元建ての長期国債の格付けが引き下げられましたが
(フィッチ・レーティング)その見立てによると、家計部門も含めた国家債務総額が、なんとGDPの198%にも達しているそうです。
中国は一見経済大国に見えますが、日本と大きく違うのは、国債を市中消化できる
個人金融資産が極端に小さく(日本がGDPの3倍も有るのに対し、
中国はわずか半分しかない)、経済規模に見合うだけの財布の大きさと中身を持ち合わせていないということです。
焦げ付きを被るのは、中国の国有銀行が中心で有るため、一気に金融恐慌に転落するリスクが高いのです。
アメリカの論評によると、中国におけるシャドーバンキング(銀行の簿外取引を通じる委託貸付)は、
ここ数か年で爆発的に投資規模が拡大し、一説に30兆元=約5百兆円にも達しており、
中国バブルの元凶と言われる)は、地方政府の悪徳役人とつながっていて、
当にこれはバブル崩壊の地雷であり、米国発“サブプライムローン現象“の再発が最早不可避だと警告を発しているようです。

また、中国では、ほとんどの製造業大手はすでに供給過剰に陥っていて、企業の復元力も弱体化しています。
人件費が、ここ数年で150%にも跳ね上がり、元高も災いして、売り上げが軒並み3割前後も激減しているそうです。
人民元決済を求めようとしても、国際通貨の資格を有しない元では、殆ど受け入れられてもらえないジレンマに陥っています。
このような中国経済が「張子の虎」であったことを知らされる世界経済は、一時的な打撃を食らうでしょうが、
一方で中国需要の減少に伴う資源価格の下落は、日本をはじめアジアや欧州の資源輸入国には追い風となり、
世界経済にとって正常化へのステップとなることも期待できそうです。
しかも、労務コストを下げるため、自動化を加速するための工作機械への設備投資が急増し、この恩恵に世界で一番浴しているのが日本で
、一台数億円もする機械の売り上げが、ここへきて急増しているようです。

「中が二つに心で<患>という字になり、中が一つならば<忠>になる」と進歩派中国人が江沢民後の中国指導部のパワーゲームを非難している通り、
この国の歴史は、歴代王朝末期で有れ、共産党指導部交代期で有れ、必ず起こるのが政治の対立と混乱で、その際惹起されるのが疫病の蔓延です。
今次も政争下で鳥インフル新感染症に脅かされており、医療機関のモラル低下から、患者の隔離政策が後手に回りウイルスを垂れ流してしまったようです。
この秋の共産党中央委員会総会で習保守派と李改革派がしのぎを削ることで、全党を揺るがす大権力闘争に発展するのが避けられないと言われております。
すでに習政権の左ブレは外交の異変に見られるように、軍と強硬保守派に翻弄され混迷を深めつつあるようです。

韓国の経済危機もかなりの深刻化様相を呈しておるようです。これまで国家経済を引っ張ってきた巨大製造企業のグローバル展開に、
たそがれが見え隠れし始めてきました。
もともと韓国企業には、高付加価値でブランド力のある商品を創造できないという積年の課題を抱えてきたのが実態で、
中付加価値の汎用品の生産大国として、ウオン安の追い風も受けて、価格競争力を発揮してきたのが、これまでの現実でした。
そこへ持ってきて、ウオン高への転換、北朝鮮の対外強硬姿勢と崩壊リスク、国内の少子高齢化、グローバル化のつまずき、
研究開発能力の不足によるイノベーション力の欠如、そしてこうした事情を判断してか、ここへきて外資による投資額の激減などが
一挙に多重苦となって、朴大統領を悩ませているのです。

韓国の自動車業界を見ても、現代・起亜グループは、まだまだ海外比率が低く(日本メーカーは実質70-80%に達しているのに、
名目で50%弱しかなく、しかも大半の部品が韓国製輸入部品によるノックダウン方式なので、実質30%弱と想定されています)
しかも取り巻きの系列部品資材メーカーが極端に少なく、脆弱であるため、日本の部品メーカーにまで供給を仰がねばならないなど、
ほとんどグローバル展開が未完のままのようなのです。

電子産業に目を転じても、スマートフォンで29%、液晶TVで 28%などトップシェアーを握り、半導体メモリーでも圧勝している、
あのサムスンでさえも、すでに先進国市場では飽和化が目立ち始め、主戦場が新興国・途上国に移りつつある中、
ノキアや中国・台湾勢の低価格路線に揺さぶりをかけられ、ウオン高と少子高齢化による国内労務コスト圧力から
グローバル競争に立ち行かなくなってきているようです。
当に液晶パネル工場の低稼働で経営が一挙に悪化したシャープの二の舞を踏んでおり、その状況はLG電子も同じ穴のムジナで、
国内空洞化へ向かう構図を描き出しております。
さらに追い打ちをかけるのは、研究開発能力の低さを補ってきた「技術輸入と模倣による産業戦術」の行き詰まりで、
今春のOECDの統計によると、特許など技術輸出額を輸入額で割った「技術貿易収支」で
韓国は0.33と加盟国中最下位に転落したそうです。
(因みに日本は4.60でトップ、米国は1.46) こうした技術の対外依存を象徴する事件が、鉄鋼産業でも起きています。
新日鉄が韓国ポスコ社に対して起こした「技術の不正使用訴訟」は、すでに社内文書などの証拠も挙がっており、
韓国側の敗訴が濃厚だと言われております。
日本がここ二十年間苦しめられてきた産業構造問題が、どうやら韓国の苦渋へと移り代わろうとしています。

韓国が抱えている、もう一つの、かつ最大の危惧は北朝鮮問題ですが、
中でも「サイバー防衛体制がザルに近い杜撰な状況にあると報じられております。
なんでも、グローバルネット専門家によれば「北朝鮮が使用している機器や知識は指折りのハッカーレベルに達している」そうで、
この辺りは日本のセキュリティーの弱さとも相通じる危惧を抱えていることは事実で、共通しているのは
「国民全体の国防意識の低さ」に問題があるようです。
これまでは、ATMが使えなくなったなどの金融機関とTV局などの一部の被害で済んだようですが、
今後は原子力発電所や交通システムといったインフラ破壊工作へ進むとか、
大手輸出メーカーを狙うのではないか、といった憶測が流されている中、
日本にとっても対岸の火事では済まされそうもない大きな心配の種でもあります。

以上概観してきたように、中韓の対日強硬外交姿勢も、内政の反映と捉えますと、
我が国の取るべき道は、拙速な対応に焦ることなく、当座は冷静を保ち、「機の熟すのを待つ」巧遅こそ、
採るべき最善策であり、国益に沿うものであろうかと考える次第です。
参議院選挙が迫っておりますが、願わくは、国会のネジレが解消され、経済成長戦略の旗印のもと、
日本再生が果たされることを念じております。
徳富蘇峰の言「国家興隆する時、国民は理想を以って生活し、国家衰退する時、
国民は生活を以って理想とする」に明示されたように、4年前の衆議院選挙で、日本国民は誤って「生活第一」を謳った
民主党政権を選択し、国民は理想をなくし、国家衰退から脱することが出来ませんでした。
国家国民経済の低迷からの脱却に成功したレーガン改革もサッチャー改革も、国民の理想を掲げ、まずは国家経済の立て直しを優先し、
全産業・全業種に恩恵が行き渡る構造改革や法人税減税により、まずは企業の活性化、
その結果としての家計への波及という順番を間違えなかったことにつきるのです。 
 
 
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