ケン幸田の世事・雑学閑談(千思万考)
第百二十三話:「川明き・舟遊びと猪牙舟」
2021/06/01
漁猟解禁を意味する「川明き」という季語は、鮎釣りの解禁を言いますが、京都の鴨川では
陰暦の六月一日を川明きとしましたが、今日でも陽暦の六月一日を漁猟解禁日とする川が
日本全国には多いようです。
中には、長良川は五月十一日、久慈川は六月十五日などと、特別な日もあります。
相模川は、六月一日から十月十五日までを鮎漁の期間と定めております。
鮎と言えば、万葉の頃からの”川魚の王様”で、風味の良さもあり、はなはだ賞味され、
その独特の香りから”香魚”とも呼ばれ、旬の題にも多くなっています。
                    
   浮鮎をつかみ分けばや水の色    椎本才麿
   鮎くれてよらで過ぎ行く夜半の門  与謝蕪村
   激流を鮎釣竿で撫でてをり     阿波野青畝
   山の色釣り上げし鮎に動くかな   原石鼎
                    
川釣りと言えば、長くて撓りも良い釣り竿が進化する以前は、小舟を繰り出しての釣りも
多く見られましたが、舟遊び以外にも、人の渡しとか貨物搬送用に、昔から小舟は、
貴重な運輸手段でした。
舟の源流は、古代海洋族文明の丸太船だそうで、我が国の縄文人と、古代エジプト人の舳先を
尖らせた丸太船は、ともに古代東西文明利器の代表として歴史に名を留めております。
その東西世界史の近代版末裔が、江戸初期に生まれた猪牙(チョキ)舟と、ベネチアのゴンドラ舟で、
共に屋根はなく、細長く船首が尖っていて、船頭一人に極少人数の客を乗せる”かつての高速艇”で、
船尾の船頭が手漕ぎの櫂を操る姿が粋な乗り物でした。
    
   老一人のせて静かに遊び舟     富安風生
   俊寛のごとく遊船見送りぬ     黒川花鳩
                    
猪牙という名前が唐突で面白いですが、舟の形が猪の牙に似ているからという説が一般的ですが、
一方で長吉という舟大工が最初に造った「長吉舟」が、なまって「ちょきぶね」になったという説も
あるようです。
なお、舟遊びや渡しとして小舟を操る船頭同士が、並走する他舟に後れを取らぬ様に,
早漕ぎを競って勝ちにこだわったことから、「猪牙(長吉)を負かす」が
転じて「ちょろまかす」という言葉が生まれたという話も伝えられています。
 
川釣りでよく知られる陸封魚には、鮎よりは上流の渓流にいる岩魚と、下流に棲んでいる
山女魚(あめご)があり、いずれも山中での美味として賞味されています。
                    
    山桑の花咲く頃の岩魚狩      高野素十
    山女釣晩涼の火を焚きゐたり    水原秋櫻子
↑ページの先頭に戻る


 本サイトが掲載する情報・画像等は、提携サイトの湘南情報サイト「ロハスケ」編集部より提供されています。
著作権は「ロハスケ」編集部に属します。
権利者の許可なく複製、転用、販売などの二次利用をすることを固く禁じます。
商業目的に記事を引用、転写する場合は、引用:一項30,000円、転写:50,000円となります。

Copyright NOGI-BOTANICAL All rights reserved. 
本サイトが掲載する情報・画像等は、広告主の湘南情報サイト「ロハスケ」編集部より提供されています。著作権は「ロハスケ」編集部に属します。
権利者の許可なく複製、転用、販売などの二次利用をすることを固く禁じます。