ケン幸田の世事・雑学閑談(千思万考)
第百十八話:「日本人の心情に添う芒(ススキ)」
2020/12/05
日本の何処にでもある芒(*ススキ)ですが、欧米ではあまり目にすることのない
植物で、東洋的な風景を作り出し、万葉集の昔から和歌や俳句に数多の首句を残しており、
また野口雨情の船頭小唄に「俺は河原の枯れすすき、同じお前も枯れすすき、、、」とあるように、
うらぶれた心情を呼び起こすのも、“すすき”あればこその風情だと思います。
俳句でも「青芒」は夏の季語、「枯芒」は冬の季語ですが、なんといっても
「秋の七草」尾花(*ススキの穂)こそ、秋風にふわりと一斉に揺れる花穂は、
昔から日本人の心情に添うので「為耐木」「須須伎」とか「薄」「十寸穂」など、
数多くの別称が生み出されてきた代表的な季語と言えそうです。

     山は暮れて野は黄昏の薄かな      与謝蕪村
     何ごとも招き果てたる薄かな      松尾芭蕉
     ひとりゆけば芒のひかり空のひかり   山口草堂
 
   芒は、またの名を萱(*カヤ)とも言い、生活的にも我が日本人の祖先とも
結びついていて縄文時代から利用したようです。
諏訪大社上社には、萱で作った仮屋「穂屋」を使う八月の催事があり、
長野県下各地では、この日、芒の茎を箸にして食事をし、無病息災を祈るところが
多いそうです。
また、六月の水無月払いの行事には、茅の輪の神事があり、萱の輪をくぐって
罪汚れを払うのです。
萱(茅)を刈り取って屋根を葺くのに欠かせないもので、一度葺けば腐敗に強く、
20年も保つことや、冬暖かく夏涼しく、貴重な建築材料だったので、
信州各地に「かや場」があり、今も「萱野高原」「萱場」とか「茅野」などの
地名を残しております。

      芒野や浅間の煙吹き下ろす       高野素十
      古郷や近よる人を切る芒        小林一茶
      なにもかも失せて薄の中の路      中村草田男
      萱刈の地色広げて刈進む        篠原温亭
 
   芒は一科一種の植物ですが、変種がかなりあるようで、長野県下では、穂が紫色の「ムラサキススキ」と呼ばれる種があり、昭和天皇の行幸を記念して「ミカドススキ」と命名されたそうです。解説付きの写真で見ただけですが、普通の芒に比べ穂が三分の一ぐらいで花が光沢のある褐色がかった色に見えました。 

*㊟編集部
        
    
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