感染症の海外ニュースと解説
世界マラリアの日(World Malaria Day)とヨモギ(クソニンジン)のマラリア特効薬アーテスネート(artesunate:アルテミシニン)
2015/10/09
クソニンジン(Chinese wormwood :Qing Hao:Artemisia annua L) クソニンジンのヨモギパワー(アルテミシニン)がマラリア退治 1.世界マラリアの日(World Malaria Day) 2.アフリカ・マラリアの日(Africa Malaria Day) 3.マラリア感染の現状と抗マラリア薬耐性寄生虫の増加 4.マラリア原虫(malaria plasmodia.)とは 5.クソニンジンから抽出されるアーテスネート(アルテスネート:artesunate) 毛沢東の523プロジェクトでノーベル賞を受賞した屠??(Tu youyou)博士が発見 *屠??:トゥーユーユー 「毛沢東の523プロジェクトと屠??(Tu youyou)博士」 http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=451 6.アルテミシニン(アルテミシン)(artemisinin, artemisine)含有の予防薬、治療薬 7.混同されるカワラニンジン(青蒿)とクソニンジン(黄花蒿) 8.キク科(Compositae)ヨモギ属(Artemisia)の主要な薬草 9.アルテミシニン(アルテミシン)の需給が緊迫 10.WHOが推奨するACT治療(artemisinin-based combination therapy) 11.2004年アフリカ・マラリアの日開催国セネガル(Republic of Senegal)とは 1.世界マラリアの日(World Malaria Day) 毎年4月25日は国連の世界マラリアの日。 世界では106ヶ国、33億人がマラリア感染の危機に直面。 感染者総数推定2億1,000万人、推定627,000人が死亡しています(2012年:WHO)。 世界マラリアの日は2001年にスタートしたアフリカ・マラリアの日を 2007年に世界規模に変身させたもの。 アフリカ諸国及びマラリア撲滅に指導的な地位にある世界保健機構(WHO)は 2004年のマラリア撲滅キャンペーンでは安価なヨモギで作られた アーテスネート(アルテスネート)などのアルテミシニン(アルテミンシン)治療法を 徹底するよう訴え、以後約10年間で推定330万人の命を救ったといわれます。 この数字は死亡率ではアフリカで49%減、世界では42%減にあたるそうです。 2.アフリカ・マラリアの日(Africa Malaria Day) アフリカ・マラリアの日は2000年4月25日に制定されました。 この日にナイジェリア(137,253,133)の首都アブジャ(Abuja, Nigeria)において、 マラリア撲滅サミット会議がアフリカ諸国44カ国によって開かれたことに始まります。 会議では10年間でマラリアを撲滅することを誓いましたが、2005年がその中間点。 2004年のスローガンは「マラリアの無い未来」、「子供の感染を防ごう」(A Malaria-Free Future。 Children for Children to Roll Back Malaria.)。 2005年は「マラリアに対して団結しよう」「共にマラリアを撲滅しよう」(Unite Against Malaria、Together We Can Beat Malaria)。 キャンペーン都市は毎年変わり、2003年の催事が行われたのは旧フランス領セネガルの マタム(Matam region of Senegal)でしたが、2004年は旧イギリス領のザンビア(Zambia)(人口10,462,436)。 2003年のキャンペーンではセネガル人(セネガルの解説は巻末)の 世界的なポップ歌手ユッスー・ンドゥール(Youssou N'Dour)なども協力公演をおこない、 マラリアの日が世界的に知られるようになりました。 3.マラリア感染の現状と抗マラリア薬耐性寄生虫の増加 世界人口の40%を超える33億人、106カ国の人類とマラリアの戦いは世紀を超えています。 10年前の2004年には世界では2~3億人が感染し 5歳以下の幼児を中心に毎年250万人近くの死者が出ていると推計されていました。 これは感染症としては結核に次ぐ規模。 サハラ砂漠以南のアフリカ大陸が世界の発生の90%を超え、30秒に一人の子供が死亡していると いわれていましたが、これは出生5人に対して一人の死亡率(WHO)。 マラリアの発生は貧困と密接な関係があります。 過去に多発地帯であったタイのバンコク、中国の沿海部南などの地域では、 経済が豊かになるとともに、マラリアは大幅に減少しています。 アジア太平洋地域の感染は395,607人、死者は1507人/2003年。 死者の多い順ではカンボジア、パプア・ニューギニア、ラオス、フィリッピン、 ソロモン群島、中国、ヴェトナムなどが挙げられますが減少傾向。 日本は第2次世界大戦後に中国南部やアジア戦線帰国者が持ち帰った原虫が 蔓延した時期がありましたが、現在はアジア、アフリカ、中南米などからの帰国者が 輸入する事例が毎年120例前後ある程度だそうです。 これに反して経済的な問題国が多いアフリカ諸国では、蚊を防ぐことも、治療薬を入手することも 困難なために感染者が絶えません。 撲滅を困難にしているのは、主たる感染地のアフリカ諸国はもとより、 タイ、ミャンマー、ラオス、カンボジアなどで、抗マラリア薬の主流であるメフロキンに 耐性のある熱帯熱マラリア原虫が急増していることもあります。 このような状況下で2000年ごろから話題となっていたのが、ヨモギ由来の安価で、耐性寄生虫に 有効なマラリア治療薬のアルテミシニン(アルテミシン)水溶性誘導体。 2015年にノーベル医学、生理学賞を中国の屠??(Tu youyou)博士が受賞し一躍世界に 知られるようになりました。 (*屠??(Tu youyou)博士はいわゆる博士ではありませんが、関係者は 尊敬を込めて Drの尊称で呼んでいます) 4.マラリア原虫(malaria plasmodia.)とは マラリア原虫はアジア、アフリカ、中南米、オセアニア、カリブ諸島など熱帯、亜熱帯で 非常に多い寄生虫で、感染地は地球人口の40%を占めます。 マラリアは熱帯、亜熱帯特有のハマダラ蚊(Anopheles)のメスによって媒介されます。 ハマダラ蚊によって人体に侵入する寄生虫はマラリア原虫(malaria plasmodia.)と呼ばれます。 マラリア原虫には熱帯熱マラリア原虫(plasmodium falciparum)の他、 三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax) 、 卵形熱マラリア原虫 (Plasmodium ovale) 、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae) などの 種類があります。 4種類の原虫の中で、特に熱帯熱マラリア原虫(plasmodium falciparum)の 病害性が強いと言われます。 高熱、脳障害、腎不全など様々な症状が発症し、死に至ります。 古くは第二次世界大戦の南方作戦で、日本の軍隊に多発しました。 当時はコレラなども多く、疫病死が戦死者を上回るとも言われたものです。 5.クソニンジンから抽出されるアーテスネート(アルテスネート:artesunate) 最近までマラリア治療には、伝統的なキニーネ系のメフロキン(mefloquine)治療薬などに、 寄生虫の耐性が出来ている問題点がありました。 2000年ごろより、耐性を持ったマラリア原虫の駆除に世界が注目しているのが、 中国の伝統的な漢方薬、黄花蒿より開発されたアーテスネート(artesunate)。 毛沢東のマラリア撲滅523プロジェクト(トゥーユーユー博士ら)によって 効能が発見されたものです。 (*屠??(Tu youyou)博士はいわゆる博士ではありませんが、関係者は 尊敬を込めて Drの尊称で呼んでいます) 大手製薬会社の関心が薄いマラリア治療薬市場で、 中国の桂林製薬(Guilin Pharma)(広西チワン自治区:Guangxi)がこの研究に 基づいて生薬由来のマラリア治療薬を開発しました。 ヨモギから抽出されたマラリア治療薬はアリネート(Arinate)と名付けられ、 困窮する西アフリカに広範囲に供給されています。 (Group: antimalarial agent) Tablet 50 mg (artesunate) Powder for injection 60 mg of anhydrous artesunate in 1-ml ampoule + 5% sodium bicarbonate in 0.6-ml ampoule 特効薬として知名度が上がると共にタイ、ミャンマー、カンボジア、ラオスなどでは 桂林製薬製品の偽薬が大量に出回っており、WHOなどでは注意を呼びかけています。 桂林製薬では、偽物が価格的に対抗できないように、大量生産によって価格を 引き下げることを考えているそうです。 クソニンジンは紀元前より暑さを凌ぐ薬草や痔の薬として知られていましたが、 1972年に中国薬学院(Chines Institute of material medicine)で分析され、 1980年代に広東省を中心に抗マラリア、抗ワイル氏病(Weil's decease)に 著効を示すという研究が進みました。 この研究をリードしたのが523プロジェクトの中心的研究者で2011年にラスカー賞の 臨床医学賞、2015年にノーベル賞を受賞したトゥーユーユー:屠??(Tu yuyu)博士. 523プロジェクトはベトナム戦争の終盤にマラリアに苦しむ北ベトナム兵を 援護するために毛沢東が主導した大プロジェクト。 「毛沢東の523プロジェクトと屠??(Tu youyou)博士」 http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=451 アーテスネートはヨモギの近似種類であるキク科ヨモギ類のクソニンジンから 抽出したアルテミシニン(アルテミシン)の水溶性誘導体(C15 H22 O5.)。 アーテスネートはキニーネ系のメフロキンと併用(ACT治療)すれば重症な 熱帯熱マラリア原虫に特に有効と言われます。 ACT治療はアルテミシニン・ベース混合治療(artemisinin-based combination therapy)の 略語。 メフロキン(mefloquine)製剤の商品名にはスイスのメファ社(Mepha)の メファキン(Mephaquin) 、ロシュ社(Roche)のラリアム(Lariam)などがあります。 6.アルテミシニン(アルテミシン)(artemisinin, artemisine)含有の予防薬、治療薬 2004年現在、アルテミシニン誘導体にはアーテスネート(artesunate)、 ジヒドロアルテミシニン(dihydroartemisinin)、アーテメター(アーテメセリ)(artemether, artemetheri)などが知られています。 Arinate(アリネート): アーテスネート:(生産会社)中国の桂林薬品(製薬) Artequin(アルテキン):メフロキンとアーテスネートの複合剤:(生産会社)メファ社(Mepha) Alaxin(アラキシン):ジヒドロアルテミシニン:(生産会社)ナイジェリアの会社である Greenlife Pharmaceuticals Company Limited.著名なCotexin(コテキシン)の模倣として訴訟中。 Coartem(コアルテム):アーテメターとlumefantrineの合剤(artemether-lumefantrine)。 :(生産会社)ノバルティス・ファーマ社(Novartis Pharma AG) Cotexin(コテキシン):ジヒドロアルテミシニン。 東アフリカで非常にポピュラー:(生産会社)ナイジェリアの会社 Churchbells Pharmaceuticals Ltdが発売元。 中国の「北京コルテック新技術社」とのライセンス(Beijing Cotec New Technology Corp)。 桂林薬品製との関連は不明。粉末と錠剤がある。 Riamet(リアメ):コアルテム(Coartem)のヨーロッパ・ブランド :(生産会社)Paluther(パリュウテル:パリュウサー:アーテメター)。 :(生産会社)ブラジル、サンポーロのディア社(Rhodia Farma Ltda)注射薬のみといわれる。 Plasmotrim Lactab(プラズモトリム・ラクタブ):アーテスネート: (生産会社)メファ社(Mepha)注射薬、座薬、錠剤 Plasmotrim Rectocaps(プラズモトリム・レクトキャップ):(生産会社)メファ社(Mepha) *タイのアトランティック製薬(Atlantic Pharmaceuticals ,Bangkok)が 発売するアーテスネートは桂林製薬製品の詰め替え品。 7.混同されるカワラニンジン(青蒿)とクソニンジン(黄花蒿) (写真上)左がクソニンジン(黄花蒿).右がカワラニンジン(青蒿) 桂林製薬(中国)のアーテスネートは学名Artemisia annua L、 漢方薬名の黄花蒿(おうかこう)を基本にしているといわれます。 黄花蒿は和名ではクソニンジンを指します。古来の漢方薬名である青蒿(せいこう)は 学名がartemisia apiacea Hance.和名はカワラニンジン。 欧米では学名:Artemisia annua Lを青蒿と訳していますが、 この学名は近縁類の黄花蒿(おうかこう)。 青蒿と黄花蒿は中国、日本でも古くから混同していたようです。 カワラニンジンとクソニンジンは本州以南では野山、平地に普通に見られる植物ですが、 中国や欧米でもごく普通の植物です。欧米ではキク科のヨモギ類に Sweet Wormwood Herb, Sweet sagewort, sweet Annie, Chinese wormwoodなど 通称が沢山ありますが、かなり混同して使用されています。 ニガヨモギを青蒿と混同する解説もありますが、これはArtemisia absinthium Linnという別種。 カワラニンジン(青蒿)とクソニンジン(黄花蒿)が混同されている背景には、 現代中国(中華人民共和国薬典:1977年)で双方の植物を生薬の青蒿(チンハオ)として 認定していることがあるようです。 クソニンジンの香りはカワラニンジンより数段に強いことから、 トリテルペン類セスキテルペン(sesquiterpene lactone)の アルテミシニン誘導体がより多いことが推察されます。 8.キク科(Compositae)ヨモギ属(Artemisia)の主要な薬草 クソニンジン(Chinese wormwood :Qing Hao:Artemisia annua L): 黄花蒿(おうかこう) カワラニンジン(Chinese wormwood :Qing Hao:Artemisia apiacea Hance): 青蒿(せいこう、チンハオ) 解熱、疥癬。 タラゴン(Tarragon:Artemisia dracunculous) 消化、下剤、催眠。 オオヨモギ(Arnica:Artemisia Montana Pampan):艾葉(かいよう). 灸のモグサ。胃、貧血 カワラヨモギ (Artemisia capillaries Thunb) :茵陳蒿(いんちんこう) 黄疸、皮膚疾患。 ニガヨモギ(wormwood:Artemisia absinthium Linn) 消化器疾患。リキュールのベルモットの主成分に使用される。 スピリッツのアブサンにも混合されています。 ヨモギ (Artemisia princes Pamp) :艾葉(かいよう) 若芽が草もち、草団子に。灸のモグサにも使用される。胃、貧血、下痢。 日本にはヨモギの類似種が30種はあり、場所名など様々な名がつけられています。 9.アルテミシニン(アルテミシン)の需給が緊迫 WHOがACT治療(アルテミシニン・ベース混合治療)を推奨していることから、 アルテミシニン(artemisinin)を抽出するクソニンジンの生産が 追いつかなくなっています(*天然由来の原料を使用していた2004年当時)。 アルテミシニン医薬品群ではジェネリック医薬品(generic)を生産する ノバルティス・ファーマ(Novartis)のコアルテム(Coartem)がWHOにトップ推奨されています。 WHOが中国製品でなく、後発のノバルティスを推奨するのは、 同社がジェネリックにより困窮するアフリカ諸国にコアルテムを格安に提供しているからです。 *クソニンジンは栽培に6ヶ月はかかり、アーテスネートなどの製品を作るには、更に2-5ヶ月かかります。 ハーブは生産地、生産時期によって成分が大幅に異なりますが、農業生産物は前もって、 充分な生産計画があれば目標を達成することはそれほど困難ではありません。 これまではこのような急増を予想していませんでしたので、 天然由来のアルテミシニンはしばらく一時的な不足状態が続く可能性があります (化学合成される前の2004年記)。 10.WHOが推奨するACT治療(artemisinin-based combination therapy) ACT治療はアルテミシニン・ベース混合治療(artemisinin-based combination therapy)の略語。 (アルテミシニンとアルテミシンは同義語) マラリアにはいまだにワクチンがなく、現在開発途上といわれます。 WHO は急増する抗マラリア薬耐性寄生虫の対策として、これまでの抗マラリア薬のみの 治療をACT治療に換えることを推奨(*というより義務付け)しています。 マラリアは種類によって効果のある薬が限定されますが、 もっとも重篤な症状がでる熱帯熱マラリア原虫(plasmodium falciparum)には ACT治療が最適といわれます。 *近年はマラリア原虫の多剤耐性が進み種類により効果ある医薬品が異なりますので 単体医薬素材を避けACT治療にすることを義務付けるようになっています。 *これまでの抗マラリア薬とはキノリン混合体(quinoline compounds)のキニン(quinine)、 クロロキン(chloroquine)、アモディアキン(amodiaquine)や スルフォナミド(sulfonamides)、ピリメタミン(pyrimethamine)等。 *ACT治療はアルテミシニン誘導体(artemisinin derivatives)医薬品 を主体として 上記のキノリン系、スルフォナミド系抗マラリア薬等を組み合わせたもの。 WHOによればACT治療の要求は2004年で3,300万セットあり、 2005年では132百万セットと予測しています。 2004年に開かれたWHOなどと生産者による会議では、2005年は最低でも 1億セット分の生産が必要としていました。 11.2004年アフリカ・マラリアの日開催国セネガル(Republic of Senegal)とは 西アフリカの北大西洋に面した、サハラ砂漠南側の独立国。日本の約半分(197,161km2 )の国土。 ギニア・ビサウ(Republic of Guinea-Bissau)、モーリタニア(Islam Republic of Mauritania)ギニア(Republic of Guinea)、マリ(Republic of Mali)、ガンビア(Gambia)に隣接しています。 人口約10,580,307人 ( 2003年)、旧フランス領で1960年に独立しました。首都はダカール(Dakar)。 1982年にはガンビアと合併(Senegambia)しましたが、現在は離別しています。 イスラム教徒(Muslim)が 94%を占め、労働人口の70%は農業、漁業従事者ですが、 国民総生産に占める農業の割合は低く、18%くらいにしかなりません。 失業率は都市部の若者で約48%(2001年)にもなります。 初版: 2004年04月24日 12:02(no.2004042408) 改訂版:2014年5月 改定版:2015年10月 (広告) https://www.botanical.jp/item_view.php?item_number=28 レスベはフランス産の天然赤ブドウを原料に日本で初めて作られた ブドウ・レスベラトロール・サプリメント. 最初のモデルの開発を始めてからすでに20年を超えました。 レスべのブドウ・レスベラトロールはイタドリ由来のものや、医薬品目的に 化学合成された合成レスベラトロールとは全く異なる物質。 天然レスベは過剰摂取が不要ですから長期間摂取の安全性や慢性炎症を抑制する効能は ブドウを食するのと同じです ニューモデルは天然の赤ブドウが持つトランス型ブドウポリフェノールのスチルベノイドと プテロスチルベン、ケルセチン、CoQ10、 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