ケン幸田の世事・雑学閑談(千思万考)
第九十五話:「地政学に代わって地経学の時代に突入」
トランプ政権による習近平中国の封じこめ
2018/10/19
「地政学に代わって地経学の時代に突入」
(原稿は長文ですので一部をご紹介します)
 
核抑止力が働いて、大戦が回避され冷戦にも終止符が打たれたことで、
いよいよ経済競争が本格化したのが、今世紀に入ってからの潮流でした。
ここ数年前から経済力をつけた中国習近平政権が、身の丈も知らずG2論を
持ち出し、米国と世界を二分する覇権欲を露(あらわ)にし、今世紀なかばの
建国百周年には米国をしのぎ世界の覇権を握るとまで宣言したことに目覚めた米国が、
それを許したオバマ政権の大失政の軌道修正に立ち上がったトランプ政権を旗頭に
共和・民主両党とも議会を挙げて、対中経済戦争を仕掛けております。
ここへ来て、日増しに旗色を悪くする中国のみならず、EU・ユーロ圏の苦境、
国連経済制裁の影響が深まるロシアではプーチンが支持率を落とすなど、
経済力による新たな国際秩序形成の流れが本格化し、今や地政学に代わって、
いよいよ「地経学」の時代に突入したとの世界的論評が目立って来ました。
目下経済好調の日米が再度主役に返り咲くチャンスでもあります。
 
米国の中国封じ込め:
当初、多くのメディアは「米中貿易戦争」は、輸入金額の多い米が不利とか、
世界経済の成長率を押し下げ大恐慌に至るなどと危機感を煽(あお)りましたが、
つい先日までは世界の株式市場はこの懸念を払拭(ふっしょく)するばかりに、米国との
政経上の距離感が近い国(日豪印他)の株価が上昇基調に転じており、
一方中国との距離感の近い国(ドイツ、台湾、韓国他)の株価は大幅下落しております。
(この稿を起こした途端に、世界的な株暴落が突如起きましたが、その中身を見ても、中国は最も重症、日米は軽傷と、やはり違いを見せています。主因は、米景気過熱対策の利上げと利ザヤ稼ぎだろうと思われます)
どうも世界は短期的にも長期的にも、勝者はアメリカ、敗者が中国と予見していると
見えます。
(ドル高・人民元安が関税障壁を相殺して中国に不利でインフレリスクが社会不安と
習体制批判を強めている一方で、世界の工場としての中国製造業の国際競争力が
ベトナム他へ移行する中、自由貿易にただ乗りし、次世代産業育成を急ぐ為、米国から
知的ノウハウを盗み資本財を輸入した上で自国は保護育成政策をとり他国へ輸出しようと
企んだ産業政策が米国による追加制裁で骨ぬきにされ、産業構造高度化の芽も
摘まれてしまったのが現実です。)
 
対中経済戦争の源流は、トランプ就任以前に、コロンビア大 ハバード教授と
カリフォルニア大 ナバロ教授によって書かれた
「アメリカ経済の修復論――中国封じ込め」にあって、既に減税、金融緩和停止と
強いドル達成、戦略的通商政策など、トランプ政権が推し進めてきた政策実践が
示す通りだと考えられます。
因みに、中国の国際収支を見ると、ここ数年「誤差脱漏(だつろう)」の赤字、
すなわち資本の海外流失(元安と自国の将来を懸念した富裕層による資産の海外逃避)が
加速度的に膨れ上がっているものとみられ、為替操作や金利引き上げで元安を止めようとすると国内経済減速を甘受(かんじゅ)せざるを得ず、
政策ジレンマに陥っているようです。
米国は次の一手(法人減税とインフラ整備)でハイテク産業の国内回帰を促すそうですから、中国としては、米国に白旗を挙げざるを得なくなる
(国際法順守に立ち返り、パテント使用対価を支払い、人民元の変動相場制受け入れ、対外資本取引規制撤廃、ITO方式による市場開放など)と思われますが、逆にこれらすべてを実行すると共産党一党独裁(習長期政権崩壊)の可能性を高めるので、
これも許容し難く、中国の苦境解決の手段は見当たりません。
習近平政権による政敵の排除と賄賂粛清を兼ねた“虎退治(共産党幹部対象)と
キツネ狩(官僚・軍部)”で捕らえた150万人だけでは、資金の海外逃避や
不正蓄財対策が行き届かず、“ハエ叩き(地方役人)や蟻つぶし(民間富裕層)”まで
取り締まりの間口を広げても解決に至らない中国の解決策なき重篤な苦悩は、
まだまだ長続きしそうです。
 
トランプ政権の対中勝利を決定づけた三要因:
目下非公式情報によれば、習近平の経済政策中枢である人民中央銀行と
国家財政当局が正面衝突し、北京は混乱状態だと報じられています。
さらに深刻な問題は、主要メディの人民日報や新華社が、習政権取り巻きの
清華大他の北京学界が犯した大罪(オバマ体制時代の機密情報をもとに、
中国経済システムをアメリカ資本主義体制に取って代わらせ、世界覇権を目指せと政策提言した)を糾弾(きゅうだん)し、深刻な対立を生んでいるようです。
ペンス副大統領が声明した通り、トランプ政権が中国に仕掛けたのは、単なる貿易戦争なんかではなく、最終目的は中国の不法な政経システムを破壊し米国と覇権を争う根を断ち切ることだったようです。
その第一戦略は、中国の国営企業のアメリカ進出を法的に禁止したこと、
第二が中国の国営・民営各企業が米へ投資し、ビジネスを行う際の監視を強化(対米投資監視委員会の設置)したことで、国務・商務両省へのロビー活動が効かなくなり、CIAとFRIの許可を受けることが義務付けされたのです。
これは、IT産業等の米企業が中国へ進出して共同事業等を行う際も安保上の監視を通じて、技術・ソフトのノウハウ垂れ流しを止めると共に、中国へ流れるドルの蛇口を締め付けたのでもありました。
以上二つの戦略によってトランプは、中国の貿易量を大幅に減らすことに
成功したのです。
第三の戦略は中国が悪用して来たWTOの組織を中国寄りの姿勢から公平なものへと
切り替えさせたことです。
上級委員会が7人からなり、そのうち香港、シンガポール、アフリカなどの委員が
常時中国に好意的な判断を下して来ましたが、彼ら3人の任期切れに際し再選を
拒否することで、残り4名の裁定が3対1で中国に有利な裁定が出来なくなったのです。
米連邦通信委員会はアリババが米国で自由な活動を続けているのに、アマゾンが
中国での活動に制約を受けていることを非難し、アップル、マイクロソフトが
中国企業とのベンチャーを強要され技術を奪われた実情を公表して、
今後米国がその逆襲をすると宣言しました。
また米財務省は、中国のZTE社の対イラン禁輸協定違反を厳しく制裁したのを
前例として、中国による中東・アジア、アフリカ取引を厳しく調査し、テロリスト団体との取引、核兵器拡散防止法違反には処罰を加えると明言しています。
こうして、米中通商戦、経済戦はほぼ全面的に中国側の完敗に向かいつつあるようです。
これまで自国の経済力拡大を盾に独裁体制を強化し、軍事力増強により
チベット、ウイグルやモンゴルを弾圧して来た習主席が宿願の長期政権どころか、
想定外の短期政権に終わる日が近づいているのかもしれません。
 
 
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