世界の健康と食の安全ニュース
飲酒により脳卒中リスクは上昇するのか?:
公衆衛生センター(JPHC)のコホート調査分析
2013/09/27

2013年9月第4週のテレビ、新聞で「飲酒量の多い女性は脳卒中リスクが
1.5~2倍ほど高まる」と刺激的に報道され、お酒好き女性間で話題となっています。
5月にも同じソースから「牛豚肉の赤身を毎日100g以上摂食する人は
1.4倍ほど糖尿病リスクが高い」と報道されたばかり。

いずれも国立がんセンター関連の公衆衛生センター(Japan Public Health Cente:JPHC)が
1995年ごろから実施している45~74才の男女10万人弱規模のアンケート調査JPHC Study
基づいた分析を研究者らが海外専門誌に発表したもの。

  1. 公衆衛生センターの多目的大規模疫学調査(コホート)の主旨
  2. 調査方法と結果のダイジェスト
  3. 脳卒中と食習慣の相関
  4. JPHC Study(コホート調査)の対象地域
  5. 飲酒による脳卒中リスクの位置づけ


1.公衆衛生センターの多目的大規模疫学調査(コホート)の主旨
JPHC Studyの主旨は生活習慣と、死因の6割以上を占めるがん・脳卒中・虚血性心疾患・糖尿病などの
関連を疫学的に調査し、国民の生活改善、健康管理に役立てようとするもの。
大規模疫学調査(コホート)は手段としては有力で、先進国の欧米ではターゲットを絞り込んだ
数万人の疫学的調査で大きな成果を上げています。

JPHC Studyの10万人を超える多目的疫学調査(コホート)はデータを多岐に活用するために
調査項目が非常に多くなっています。
多目的となるとターゲットが薄れ、雑なアンケート回答となって正確さに欠ける点が多くなるのが
弱点ともいわれます。

2.調査方法と結果のダイジェスト
今回話題のテーマは早稲田大学を卒業され、大阪大学で研究する
新進の女性研究者池原賢代博士がとりまとめたもの。
JPHC Studyから選んだ40から69歳の女性約4万7000人を平均で約17年間追跡した
調査結果をもとに、「アルコール摂取と脳卒中および虚血性心疾患発症との関係」を分析。
「Heavy drinking was associated with increased risk of hemorrhagic and
ischemic strokes among Japanese women.」

「アルコール摂取量を、「飲まない」、「時々飲む」、「週にエタノール換算で1-74g」、
「週に75-149g」、「週に150g-299g」、「週に 300g以上」に分けて、「時々飲む」を基準として
発症リスクを算出。
追跡期間中に1864人が脳卒中になり、その内訳は、脳内出血が532人、 くも膜下出血が338人、
脳梗塞が964人、その他が12人でした。また、292人が虚血性心疾患にかかりました。
分析の結果、「週に300g以上」のグ ループの全脳卒中のリスクは2.30倍、
出血性脳卒中(脳内出血+くも膜下出血)では
2.38倍、脳内出血では2.85倍、脳梗塞では2.03倍と増加が 認められました。
一方、虚血性心疾患では、発症数が少なく、はっきりした傾向はみられませんでした。」
(報告のダイジェストより)

3.脳卒中と食習慣の相関
脳卒中はお酒よりも食習慣が与える影響がより大きいとされてきました。
食事、健康法、嗜好品など日常的な生活習慣はおおまかにくくる(括る)ことさえ困難なほど多様。
JPHC Studyではかなり詳細な食習慣をアンケートしていますが、
ダイジェストでは飲酒量の多い人少ない人の食習慣別グループ分け詳細は不明。
喫煙、高血圧、年齢での発症率には差異が無かったとの報告があります。

4.JPHC Study(コホート調査)の対象地域
JPHC Studyで女性の飲酒量と脳卒中リスクの相関が解析できるのか、適切なのか
という疑問も残ります。
JPHC Studyの対象は各地の保健所の協力が主体ですが、お酒の強い女性が多い都会は
約2割に相当する東京都葛飾と大阪吹田。
残りの8割以上が都会に較べれば酒量がかなり少ない沖縄宮古、五島列島、秋田県横手、
岩手県二戸、長野県佐久など地方。
食生活は都会とはかなり異なるでしょうから、やはり食習慣別のデータがないと
リスク上昇を安易に納得できません。

5.飲酒による脳卒中リスクの位置づけ
研究者は飲酒による脳卒中リスクの大きさを他のリスクファクタ-と較べどの位置でとらえているのでしょうか。
飲酒量の多い人と少ない人では肴などで食生活が大きく異なります。
また都会と地方、島嶼部では食生活が異なるでしょう。
飲酒による有害性よりもつまみ、肴となるジャンクと呼ばれるスナック菓子、高温で揚げたポテトなど
炭水化物のアクリルアミドがより危険かもしれません。
飲酒による脳卒中リスクと食習慣に深く根付く酸化脂肪酸、過酸化脂質、トランス脂肪酸過多による
脳卒中リスクをどのように比較し、ランキングするのか。
それが生活習慣改善により重要な情報となるでしょう。






 

 
↑ページの先頭に戻る


 本サイトが掲載する情報・画像等は、提携サイトの湘南情報サイト「ロハスケ」編集部より提供されています。
著作権は「ロハスケ」編集部に属します。
権利者の許可なく複製、転用、販売などの二次利用をすることを固く禁じます。
商業目的に記事を引用、転写する場合は、引用:一項30,000円、転写:50,000円となります。

Copyright NOGI-BOTANICAL All rights reserved. 
本サイトが掲載する情報・画像等は、広告主の湘南情報サイト「ロハスケ」編集部より提供されています。著作権は「ロハスケ」編集部に属します。
権利者の許可なく複製、転用、販売などの二次利用をすることを固く禁じます。